kim hyunseok




噛む犬




妻と海が見える公園で散歩していたら、
少し上がったところから三線の音と一緒に沖縄の民謡の声が聞こえてきた。
去年の沖縄旅行の時が思い出されて嬉しかった。
近くまで寄ってみた。
三線を弾きながら沖縄民謡を歌う女性の隣には木に結ばれている黒い犬がいた。
犬は近づいた私たちをみて、嬉しそうにものすごい勢いで尻尾を振った。
私たちのところまで行きたいけどリードで行けないようで苦しそうな声を出した。
犬との距離が3メートルくらい。
女性の曲が終わった。
'散歩してたらいい曲が流れていて勝手に聞きにきました'
'6月に沖縄でコンクールがあるの'
'素敵ですね’
犬は相変わらず辛そうな声。
'この子触ってみてもいいですか?'
'いいですよ'
僕は犬の顎のところを掻くような感じでごしごしと触った。
犬は嬉しそうだった。短い数秒の間に犬は僕の手に口を当てようとした。
少し異変を感じた僕は触ることをやめた。
少し犬から離れた。
そしたら犬は吠え始めた。
'どうしたの?'
何故か吠えてる犬に向かってまた触ろうとした。
頭を撫でてあげようとしたら左手の中指が噛まれた。驚いて手を引いた。
中指から伝わってくる痛みをなるべく無視して、冷静になろうと努力した。
女性は犬に叱った。
'上から触るのはダメなんですよ'
'あ、そうなんですよね'
中指の痛みはぶつけられる対象を探していた。
帰って絵を描いた。