虫
(1)
作品の搬入のためレンタカーを借り、東京へ向かっていた。
初めての道に入り、体が硬くなるのを感じていた。お天気は晴れ。
赤信号だっただろうか、ただの渋滞だっただろうか。車は道中に止まり、自分は前の車が走り出すのを待っていた。
右前の車は白い軽バンで、自分が借りた車と同じ車種だった。
違うところは水回りクリーニング、会社名などが書いてある。
その車も自分の車も進まずしばらく止まっていた。
その車の左前の窓が降りているのが見えた。同時に助手席に座り、笑っている男の人の姿も見えた。
窓が半分程度降りてきたら、中から小さい何かが投げられた。そしてすぐ窓は上がった。
助手席の男の人はずっと笑っている。
路面に投げられたのは小さい虫だった。おそらくカメムシ。地面のアスファルトの色と近い色をしていた。
ひっくり返られて、足を激しく動かしている。
1.その時自分は車のガラス越しで虫を見ながら可哀想に思っていた
2.その時自分は車のガラス越しで虫を見ながら可哀想に思わされた
3.その時自分は車のガラス越しで虫を見ながら可哀想に思ってしまった
何かしらの善悪の形を感じた。
(2)
今朝ヨガをするためマットを引いた。引いたマットの近くに小さい黒い点のようなあり、それはゆっくり動いていた。
小さい虫だと思って、特に気にしてはなかった。大きさ1ミリくらい。
ヨガを始め、2分くらい経っただろうか、姿勢を変えようとしたらいつの間にかその虫はマットの上に上がっていた。
1.このままヨガをし続けると虫が自分の体に押しつぶされて死ぬかもしれない
2.このままだと次の姿勢をとることなどに邪魔
だと思い、中指で虫を弾き、マットの外へ飛ばした。
殺すつもりではなかったが外へ飛ばされたあと虫は動かなかった。
はっと思い、その瞬時に(1)のことも思い出した。