kim hyunseok




軽い落ち葉




午後1時が過ぎ、切れたタバコを買いに近所のコンビニに自転車を乗って向かった。
坂道を勢いで降り、行き止まりのところで右へ曲がった時、左にある壁の下に何かがあったことに気が付いた。
一瞬でしか見られなかったため、それの正体が何だったかはわからなかったが、無機質なものではないというとこだけは直感していた。
自転車を止めて、振り向いてみた。
亀が甲羅の中に引っ込めた頭をちょっとずつ出していた。きっと私の自転車で驚いたのだ。
亀がいる。
晴れた日だった。
周辺を見てみたが、誰もいなかった。
しばらく道のど真ん中で亀を眺めていた。自転車へ戻って、コンビニに向かった。
水槽から出てきたのか、海からやって来たのか。
買い物が終わり5分くらい経った、
戻ったら亀はいなくなっていた。
自転車から降りて、周辺を見てみたが、亀はいなかった。
亀がいなくなったところの反対側の家から人気がした。
60代の男が家の庭で腰を曲げ何かをしていた。
'僕、さっきこの道を通ったんですけど、亀いましたよね?'
私は男に言った。すると男は
'ん?あ..あ..'
としながら、人指し指で自分で耳を指し、そして手を振った。
歳をとって耳がよく聞こえない人だと思った。
'あのー僕、さっき、この道を通ったんですけど、亀いましたよね?'
少し大きい声で言った。
'あ!...あ..あ..'
また同じジェスチャー。
耳が完全に聞こえない人なんだ、と思った。
男は僕がいるところに近づいて来てた。
今度は口を大きく動かしながら、同じことを言った。
両手をたたみ、手のひらを肩のところまで持っていって、ぱたぱたしてみた。
すると向こうも同じ動きをしながら、さらに近づいてきた。
鳥だと思ってるかもしれない、と思った。
'ここに亀がいたんですよ'
亀がいたところを指しながら、指先を回した。
'ん.あ..あ...'
男は私が指したところにまた腰を曲げ、首を伸ばしながら'それ'を見ようとした。
もういないよ、と思った。
急いで帰りたくなって、ざっと挨拶をした。
'ありがとうございました'
'あ!'
男は首を軽く下げた。